
【取材レポート】小杉湯夏至祭の特別イベント〜後編〜
6月22日(金)から24日(日)まで開催された小杉湯夏至祭のレポート記事です。
【初日】、【前編】、【中編】に続き、いよいよ最終章となる後編です。
サウナヨガ、フィンランドランチ交流会のプログラムが終わり、いよいよゲストスピーカーを招いての「トークイベント」が開始。
こちらのイベントも、司会進行は銭湯再興プロジェクトの発起人であり、中心メンバーの一人として夏至祭を運営する塩谷歩波さん。「好きな水風呂の温度は16度」と公言されていることからも、本気(ガチ)の人だということが分かります。
実際に水風呂に入ったことのある方ならお分かりになるかと思いますが、18〜20度でも十分に冷たく感じられます。サウナー界隈では、好きな温度が低くなればなるほど、玄人志向と言われています。
さて、会場はランチ交流会から引き続き参加される方達に、トークイベントを目的に来場された方達が加わり、まさに大盛況。
(写真提供:銭湯再興プロジェクト)
本当に、すごい熱気でした。
カメラのレンズが曇るほど。
で、なんだか本当に熱くなってきたので、ふと浴槽を見ると!
15:30からの通常営業に備え、すでにお湯が張られ始めてました!
数時間後には、この同じ場所で、老いも若きもみな生まれたままの姿でカラダを洗うのかと思うと、感慨深いものがあります。なんだかこのままお風呂に入りたくなります(笑)。
一人目のゲストスピーカーは、ランチ交流会にも登場されたフィンランド大使館のLaura Kopilow(ラウラ・コピロウ)さん。
高円寺に住んでいた学生時代、小杉湯さんとの奇跡的な出会いのエピソードが語られました。
高円寺暮らしを始めた当時、家電を買い揃えようとテレビを購入されたLauraさん。手持ち(!)で家まで運ぶ際、途中で声をかけてきた怪しい日本人男性がいたとのこと。
急に声をかけられたので、最初はずいぶん警戒されたようなのですが、重そうにテレビを運ぶLauraさんを見て、親切心から声をかけてくれた、おもてなしの心に溢れたジェントルマンだったそうです。
で、その方が、「自分の知り合いの日本人女性に、フィンランドが好きな人がいる。その人はシベリウス(編集部:フィンランドの有名な作曲家ですね!)も好きなんだ」ということで、シベリウスが好きな人と知り合いのこの男の人は、きっと悪い人じゃ無いはず!と安心して、そこから連絡先等交換されたようです。
その日本人女性こそが、この後に登壇される、現在はフィンランド在住のこばやしあやなさんその人だったとのことで、しかも二人は初めて会った日に、ここ小杉湯さんに入浴に来たという。
まさに、人と人の縁をつなぐローカルコミュニティとしての銭湯の素晴らしさが、実体験を持って証明される、素晴らしい物語でした。
「怪しい日本人男性が声をかけてきたんです!」のくだりで、会場は爆笑。
その後、感動的なエピソードでしんみり。笑いあり、感動ありのトークでした。
お次は、塩谷さんのトーク。
(写真提供:銭湯再興プロジェクト)
設計事務所を休職中に小杉湯さんと出会ったことがきっかけで番台で働くようになり、ついには「銭湯イラストレーター」として活躍されるまでの、これまた縁を感じさせるストーリー。
小杉湯さんで、ミラクルが起こりまくりです。
小杉湯さんの店内でもたくさんの塩谷さんのイラストを目にすることができますが、ねとらぼさんの連載「えんやの銭湯イラストめぐり」や、Twitterの#銭湯図解でも、素敵な作品の数々を見ることができます。
フィンランドのサウナにも行かれたことがあり、上の写真はちょうどそれを自作の図解を使いながら解説されているところ。
日本の銭湯とフィンランドの公衆サウナの文化的共通点などが語られ、会場中が聞き入っていました。また、トークの後半には、塩谷さんが好きな日本中の銭湯のお話も。中には、湯に浸かりながら海が見える(!)銭湯もあるんだそうです。
銭湯愛が溢れたトークでした。
そして、いよいよトークのトリを務められるこばやしさんのご登場。
「みなさんの思っているサウナは、本当のサウナじゃありませんよ!」
という冷や水を浴びせかけるようなひと言から始まる、かなりの学術的なトーク。
サウナーからすると、会場が熱気に包まれたこの段階での冷や水は、まるでサウナ後の水風呂のように感じられて嬉しい限りなのですが、それはさておき、メチャメチャ勉強になるトーク内容でした。
サウナって「高温の室内で汗をかくこと」くらいに大雑把に理解していたのですが、フィンランドでの定義は、「熱した石に水をかけて蒸気を浴びること」がメインなんだそうです。
しかも、基本的には「利用者が自由に水をかけることができて、タイミングや蒸気の量を調整できなければならない」そうで、これを当てはめると日本にある大多数のサウナは、厳密にはフィンランド発祥のサウナとは異なる「日本式サウナ」とでも呼ぶべきもの、ということになってしまうようです。
他にも、ヘルシンキ市内の公衆サウナの隆盛と衰退(現在は激減して、わずか数件だそう)が語られ、サウナ研究者によるセミナーの様相になっていました。
また、フィンランドでは自宅やサマーハウスにサウナを設置することがよくあるそうで、友人や近所の人を気軽に招くそうです。羨ましい文化です。
日本で言うところの「お隣さん、お醤油貸してくださいます?」に近い感覚で「よっ!今日もサウナ入りに来たよ♪」と言えるということでしょうか。スクリーンに笑顔で写る半裸の男性は、そんなノリに見えます。まったく羨ましすぎる文化です。
最後は、塩谷さんが聞き手となり、こばやしさんとのトークセッション。
日本とフィンランド、両国の誇るべき文化、サウナと銭湯の共通点と相違点が愛ある視点で語られ、無事終了。
15:30からの通常営業に向けて場内の整理が進む中、名残惜しむかのように、来場者の方、スタッフの方も入り混じって、みなさんお話が尽きないようでした。
さて、そんな三日間の素晴らしいイベントを追体験できる動画がYou tubeにアップされています。
会場の熱気をもう一度味わいたい方、スケジュールが合わず、今回どうしても行けなかった方、是非チェックしてみてください!
お忙しい中、快く取材を受けてくださった小杉湯様、銭湯再興プロジェクトのスタッフの皆様、また、ゲストスピーカーの皆様、本当にありがとうございました。
以上、レポートでした。
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